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The Pretty Things  目次  前The Police  次Neu! 

01_「Balloon Burning」(アルバム:S.F. Sorrow)
The Pretty Things "Balloon Burning"[45,082_2011/01/29]
■曲名:Balloon Burning ■曲名邦題:風船は燃えている ■アルバム名:S.F. Sorrow ■アルバム名邦題:S.F.ソロウ ■動画リンク:「Balloon Burning」
このバンドの代表曲は、今一つ分かりにくいと思います。 初期のガレージ・ロック期にはシングルヒットがありますが、今回その時期は対象外ですし。 それ以降はアルバムとシングルどちらもあまり売れていません。 とはいえ有名曲はなくても名曲は数多く、10曲に絞るのに苦労しました。 特に名作「S.F. Sorrow」「Parachute」は良い曲が多く、どの曲を選んでも紙一重かもしれません。 彼らはアルバム単位で聞いた方が良いような気がします。 どれが1位とは決め難いのですが、本日の気分ではこの曲を推したいと思います。 性急なリフとコーラスの組み合わせがかっこいいですね。

02_「The Letter」(アルバム:Parachute)
Pretty Things The Letter[6,694_2012/10/01]
■曲名:The Letter ■曲名邦題:ザ・レター ■アルバム名:Parachute ■アルバム名邦題:パラシュート ■動画リンク:「The Letter」
このアルバムの前に大事件がありました。 ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)の元メンバーで、ギターのディック・テイラー(Dick Taylor)が脱退したのです。 前作までは彼のギターがサウンドの中核だっただけに、かなりの大打撃だったはず。 ストーンズでいえば、キース・リチャーズ(Keith Richards)が脱退するようなものです。 しかし残されたメンバーは、前作を上回る作品をつくりあげました。 ここには前作のような万華鏡サウンドはありませんが、その分楽曲の魅力で補いました。 地味で華やかさに欠ける曲も多いのですが、淡い音像から浮かび上がる繊細なメロディは絶品です。 ここでは特に内省的でかわいらしい、極私的に偏愛している曲を選んでみました。

03_「Rain」(アルバム:Parachute)
The Pretty Things - Rain[12,358_2012/12/10]
■曲名:Rain ■曲名邦題:レイン ■アルバム名:Parachute ■アルバム名邦題:パラシュート ■動画リンク:「Rain」
このバンドはデビュー当時、とてもスキャンダラスで悪名高き存在でした。 ついにはステージに火を点ける蛮行によって、業界内で悪評が知れ渡ってしまいました。 型にはまらない無軌道なところは、音楽にも表れています。 彼らの楽曲はまとまりが良くありません。 1曲の中で曲調がめまぐるしく変化する場合もあれば、短い曲をメドレー形式で繋げている場合もあります。 この曲もAメロ、Bメロ、サビみたいな構成ではありません。 2分19秒という短い曲なのに、イントロが33秒、曲の最後に雨の効果音が22秒入っています。 アルバムでも2位の「The Letter」の次の曲なのですが、その流れで聞いて初めて良さを実感できる曲です。 こういうところをおもしろいと思えるかどうかが、このバンドの評価する上でポイントになるかもしれません。

04_「Rip Off Train」(アルバム:Freeway Madness)
Pretty Things - Rip Off Train[312_2015/11/09]
■曲名:Rip Off Train ■曲名邦題:リップ・オフ・トレイン ■アルバム名:Freeway Madness ■アルバム名邦題:フリーウェイ・マッドネス ■動画リンク:「Rip Off Train」
このバンドは時期によって音楽性が違います。 私なりの表現で移り変わりを順番に並べてみました。 1.元祖ガレージバンク期 2.サイケデリック・ロック期 3.ウェストコースト・ロック期 4.ブリティッシュ・ハードロック期 5.パワーポップ期 この曲は3のウェストコースト・ロック期の曲です。 ジャケットがイーグルス(The Eagles)っぽいと思う人がいるかもしれません。 実際このアルバムは、大ヒットしたイーグルスのファースト・アルバムの半年後にリリースされています。 中にはイーグルスかクロスビー、スティルス、ナッシュ&ヤング(CSN&Y)のようなコーラスの「カントリー・ロード(Country Road)」という隠れ名曲も収録されています。 その変化にはレコード会社の移籍が関係しているもしれません。 彼らはハーヴェスト・レコード(Harvest Records)から、大手のワーナー・ブラザース(Warner Bro)に移籍しました。 一般に所属するレコード会社が大きくなれば、売れることが求められます。 この曲は彼らなりに売れ線を狙ったのかもしれません。

05_「Baron Saturday」(アルバム:S.F. Sorrow)
The Pretty Things "Baron Saturday"[46,450_2011/01/29]
■曲名:Baron Saturday ■曲名邦題:バロン・サタデイ ■アルバム名:S.F. Sorrow ■アルバム名邦題:S.F.ソロウ ■動画リンク:「Baron Saturday」
このアルバムは、ザ・フー(The Who)の「トミー(Tommy)」に先駆ける、世界初のロックオペラだといわれます。 ロックオペラとは、アルバムを通してストーリーが語られていたり、コンセプトが統一されているアルバムのこと。 このアルバムでは「S.F. Sorrow」という主人公の孤独な人生がテーマです。 これから歌詞を読む方のために、ストーリーは伏せておきたいと思います。 主人公は「Baron」つまり「男爵」のようですが、彼は現実感を失い、自分の人生を他人事のように見ています。 悲しみすらリアルに感じられません。 主人公に対して人からこんな風に警告される始末です。 「あなたの人生はクールだ。良識が支配している。そして人生を捨て去ってしまうのだ」

06_「Grass」(アルバム:Parachute)
The Pretty Things - Grass (1970)[23,398_2015/04/21]
■曲名:Grass ■曲名邦題:グラス ■アルバム名:Parachute ■アルバム名邦題:パラシュート ■動画リンク:「Grass」
イギリスのアート・スクールは多くの一流ミュージシャンを輩出しています。 このバンドのリーダー、フィル・メイ(Phil May)もアートスクール出身。 それゆえかこのアルバムには、独特の美意識が強く感じられます。 アルバムジャケットはヒプノシスの作品ですが、このアルバムの少しくすんだ黄昏感をよく表しています。 そして収録されているのは、味わい深い鈍色の曲ばかり。 タイプは異なりますが、ビーチ・ボーイズ(The Beach Boys)の「ペット・サウンズ(Pet Sounds)」のような、ダウナーな陰りが魅力です。 この曲はこのアルバムでも、美しさのピークともいえるかもしれません。 特にギターが空間を切り裂く瞬間の美しさは、まさにアート・ロックと呼びたくなります。

07_「Bruise in the Sky」(アルバム:Silk Torpedo)
The Pretty Things - Belfast Cowboys/Bruise In The Sky (1974)[558_2019/02/01]
■曲名:Bruise in the Sky ■曲名邦題:ブルーズ・イン・ザ・スカイ ■アルバム名:Silk Torpedo ■アルバム名邦題:シルク・トーピード ■動画リンク:「Bruise in the Sky」 ※動画はメドレーになっていますが、この曲から再生するようにしています
彼らは前作で大手のワーナーからアルバムをリリースしましたが、1枚で契約が終わってしまいました。 その後彼らは、レッド・ツェッペリン(Led Zeppelin)のスワンソング・レコード(Swan Song Records)に移籍し、このアルバムをリリースしました。 そのせいかハードロック色を強めているように思います。 この曲はそういう曲ではありませんが、イントロはいきなりツインギターから始まりますし。 あとこちらもヒプノシスがアルバムジャケットを担当しています。 見開きにするとこんな風になります。 pretty-things-silktorpedo 船と魚雷の上に座る女性とは訳が分かりません(笑)

08_「It’s Been So Long」(アルバム:Live on Air: BBC & Other Trans)
It's Been so Long (Live Musikladen, Dec. 1974)[654_2018/08/09]
■曲名:It’s Been So Long ■曲名邦題:イッツ・ビーン・ソー・ロング ■アルバム名:Live on Air: BBC & Other Trans ■動画リンク:「It’s Been So Long」
プリティ・シングスといえばフィル・メイです。 このバンドを初めて知った方からすると、いきなり何だと思われるかもしれませんが。 このバンドは音楽性がめまぐるしく変わっているだけでなく、メンバーの入れ替わりも激しいです。 フィルを除いても、過去に33人のメンバーが在籍していますし。 ただいつもバンドの中心にはフィル・メイがいました。 確かにこのバンドはストーンズやザ・フー(The Who)のような、大きな成功を手にすることはできませんでした。 またフィル・メイも、スティーヴ・マリオットのような名声を得られていません。 しかし虚心坦懐に彼らの音楽を聞くと、そうなったとしても不思議ではなかったと感じます。

09_「Tonight」(アルバム:Savage Eye)
The Pretty Things - Tonight[2,145_2013/06/01]
■曲名:Tonight ■曲名邦題:トゥナイト ■アルバム名:Savage Eye ■アルバム名邦題:サヴェージ・アイ ■動画リンク:「Tonight」
ここからはいきなり曲調が変わります。 この曲などはラズベリーズ(Raspberries)のようにポップな曲ですし。 この時期は音楽性が変化しただけでなく、バンド内の人間関係もかなり荒れていたようです。 大黒柱フィル・メイはこの時期、他のメンバーと対立していました。 そうした中でステージをすっぽかしたので、フィルはバンドを解雇されてしまいました。 自ら脱退したという説もあるようですが。 一方他のメンバーはプリティ・シングスというバンド名に固執せず、メトロポリス(Metropolis)という名前で活動を継続しました。 事実上プリティ・シングスの解散を意味しています。 このシングルはフィル脱退前にリリースされましたが、曲の印象に反してバンドは危機に瀕していました。

10_「Office Love」(アルバム:Cross Talk)
Office Love[1,987_2019/03/01]
■曲名:Office Love ■曲名邦題:オフィス・ラヴ ■アルバム名:Cross Talk ■アルバム名邦題:クロス・トーク ■動画リンク:「Office Love」
バンドを脱退したフィルですが、その後自身が率いるThe Fallen Angelsというバンドで活動していたようです。 そんなメイの元に、あるオファーが飛び込みました。 それは1960年代後半のメンバーで、1日限りの再結成ライブをやるというもの。 それをきっかけに再結成し、このアルバムが作られました。 このアルバムではパワーポップ路線が更に強化されています。 1曲目の「アイム・コーリング(I’m Calling)」など良い曲がそろっています。 それでも売れませんでしたが、昔からの根強いファンがいるおかげで、彼らはライブでバンドを継続できたようです。 確かにこのバンドは商業的には報われませんでした。 ただ過去のすばらしい作品を覚えていたファンの存在は、後に彼らの心強い支えになりました。 つまりビッグセールスが得られなかったとしても、コアで熱心なファンを獲得して生き延びたのですね。 私も微力ながら彼らの魅力をお伝えすべく、この記事を書いてみました。

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