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01_「With My Face on the Floor」(アルバム:Emitt Rhodes)
Emitt Rhodes - With My Face On The Floor[141,789_2009/06/28]
■曲名:With My Face on the Floor ■曲名邦題:床の上の顔(ウィズ・マイ・フェイス・オン・ザ・フロア) ■アルバム名:Emitt Rhodes ■アルバム名邦題:エミット・ローズの限りない世界 ■動画リンク:「With My Face on the Floor」
録音時期は「The American Dream」の方が先ですが、リリース時期ではこちらがファースト・ソロアルバムです。 このアルバムは全米チャートで29位を獲得しました。 今ではあまり使われない言葉になりつつありますが、かつてはよく「全米トップ40ヒット」という言葉が使われていました。 40位以内に入れば、ヒットしたとみなされるということですね。 この人のデビューは成功の部類だったといえるでしょう。 さてこの曲はこのアルバムの1曲目で、イントロのピアノの段階で名曲確定といった感じがします。 レーベルはダンヒル・レコード(Dunhill Records)。 ダンヒルといえば、ダンヒル・リズム・セクションと呼ばれるハウス・バンドが有名です。 しかしこのアルバムを1人でレコーディングしています。 彼は自宅のガレージをスタジオに改造して、このアルバムを録音したそうです。 そのため当初は「Homecooking」というタイトルでしたが、レコード会社の意向によってセルフ・タイトルに変更されました。 このアルバム・タイトルの変更は、レコード会社との軋轢の予兆だったかもしれません。

02_「She’s Such a Beauty」(アルバム:Emitt Rhodes)
Emitt Rhodes - She's Such A Beauty[76,620_2009/06/28]
■曲名:She’s Such a Beauty ■曲名邦題:シーズ・サッチャ・ビューティ ■アルバム名:Emitt Rhodes ■アルバム名邦題:エミット・ローズの限りない世界 ■動画リンク:「She’s Such a Beauty」
この人の紹介には「ポール・マッカートニー」の名前がよく引き合いに出されます。 ほとんど枕詞みたいなものかもしれません。 ただこの曲を聞けば、なぜそう紹介されるのかお分かりいただけると思います。 私はよく音楽仲間と話す時に「マーサ・マイ・ディア(Martha My Dear)みたいな曲」という言い方をすることがあります。 「Martha My Dear」はポール・マッカートニーが書いた曲ですが、この曲などはまさしくそれです。 実際彼もビートルズ(The Beatles)を好んでいたようですし。 この人はポール・マッカートニー・フォロワーの中でも、ヴァン・デューレン(Van Duren)などと並んで、最良の1人です。 一時は「ポール・マッカートニーよりもポール・マッカートニーらしい」とさえ言われたそうですから。 このアルバムは1970年にリリースされましたが、同年発表されたポール初のソロ・アルバムは、彼らしくないといわれる作品でした。 その2枚を比較すると、確かにそんな風に呼べなくもありません。

03_「Holly Park」(アルバム:The American Dream)
Holly Park[21,597_2019/04/04]
■曲名:Holly Park ■曲名邦題:ホリー・パーク ■アルバム名:The American Dream ■アルバム名邦題:アメリカン・ドリーム ■動画リンク:「Holly Park」
この人は元々メリー・ゴー・ラウンド(Merry-Go-Round)というバンドに所属していました。 そのバンドはメンバー間の争いが絶えず、ついには解散してしまいました。 A&Mレコード(A&M Records)からダンヒルに移籍後リリースされたのが、先程の「Emitt Rhodes」です。 しかしA&Mとの契約では、あと1枚アルバムをリリースしなければいけませんでした。 そうした時彼のソロ名義「Emitt Rhodes」がリリースされ、セールスも好調でした。 そこで古巣A&Mがメリー・ゴー・ラウンドのアウトテイク曲やエミットのデモ録音をかき集めて発表したのが、この編集盤。 ただメリー・ゴー・ラウンドはほぼエミットのワンマン・バンドでした。 この作品も当初はバンド名義でリリースされましたが、後に実態に合わせソロ名義で再発売されています。 ちなみにメリー・ゴー・ラウンドは、それほど売れたバンドではありません。 「タイム・ウィル・ショウ・ザ・ワイザー(Time Will Show The Wiser)」が、フェアポート・コンヴェンション(Fairport Convention)にカバーされましたが、あくまで将来性のあるバンドの1つという位置づけにすぎませんでした。 今回私は改めてメリー・ゴー・ラウンドを聞きなおしてみました。 しかしエミットのソロ作には及ばないと思いました。 ただメリー・ゴー・ラウンド後期の未発表音源であるこの作品を聞くと、才能が開花しはじめてきたことが分かります。

04_「Better Side of Life」(アルバム:Mirror)
Emitt Rhodes Better Side Of Life[6,298_2011/07/22]
■曲名:Better Side of Life ■曲名邦題:ベター・サイド・オブ・ライフ ■アルバム名:Mirror ■アルバム名邦題:ミラー ■動画リンク:「Better Side of Life」
サード・アルバムからの選曲です。 彼のアルバムでは「Emitt Rhodes」が最高傑作だといわれますが、このアルバムも聞き逃せません。 他にも「バースデイ・レディ(Birthday Lady)」など良い曲が収録されています。 ただこのアルバムでは、音楽に少し変化の兆しがありました。 特にギターに顕著ですが、ロックっぽいアプローチが強めに変化してきています。 その傾向は次作「フェアウェル・トゥ・パラダイス(Farewell to Paradise)」で更に強まり、その分ポール色が薄まりました。 「Farewell to Paradise」にも「ブルー・ホライズン(Blue Horizon)」など、以前とは違ったタイプの曲が収録されています。 私にとっては残念な変化でしたが、しかし一方でこの人に駄作はないとも思います。 この間エミットはダンヒルとの契約問題に悩まされていました。 ダンヒルとは3年間で、なんと6枚のアルバムをリリースする契約だったようです。 しかしすべての曲を書き、演奏もすべて自分でこなす彼にとって、それは実現不可能なペースでした。 実際このアルバムも前作から9か月後のリリースですから、どうにかスケジュールを守ろうとしていたようですが。 彼は次第に疲弊し追い詰められていき、ついに引退を決心することになりました。 無謀な契約が、前途有望なミュージシャンのキャリアを奪ってしまったのはとても残念です。

05_「Mary Will You Take My Hand」(アルバム:The American Dream)
Mary Will You Take My Hand[5,754_2019/04/04]
■曲名:Mary Will You Take My Hand ■曲名邦題:メアリー・ウィル・ユー・テイク・マイ・ハンド ■アルバム名:The American Dream ■アルバム名邦題:アメリカン・ドリーム ■動画リンク:「Mary Will You Take My Hand」
「Mary Will You Take My Hand」は直訳すると「メアリーは私の手をとるだろう」です。 「彼女は結婚を受け入れてくれそうだ、残りの人生は彼女と笑顔で過ごしたい」という内容の歌詞の曲です。 彼は一度引退してからも、曲を書き続けていました。 その後彼はオファーを受けたようです。 しかしその都度ビジネス上の問題が発生し、2度に渡ってアルバムの発売が見送りとなりました。 次作の「レインボウ・エンズ (Rainbow Ends)」が発表あれたのは2016年ですから、実に43年ぶりということになります。 作風が変わりすぎましたので今回は選曲外にしましたが、かなり良い出来です。 彼は才能に恵まれていましたし、外見的にもイケメンでした。 世界線が少し違えば、望むもの全てを手に入れられる人だったかもしれません。 ただ運には恵まれなかったのですね。 しかし彼は自分のスタジオを経営し、レコーディング・エンジニアとして生計を立てました。 そうして彼は43年という年月をしのぎました。 それでも私は彼が裏方ではなく、表舞台で活躍してほしかったと思っています。

06_「Fresh as a Daisy」(アルバム:Emitt Rhodes)
Emitt Rhodes - Fresh As A Daisy[125,665_2009/06/28]
■曲名:Fresh as a Daisy ■曲名邦題:恋のひなぎく ■アルバム名:Emitt Rhodes ■アルバム名邦題:エミット・ローズの限りない世界 ■動画リンク:「Fresh as a Daisy」
このアルバムは、他にも「死ぬまで生きよう(Live Till You Die)」など名曲が数多く収録されています。 迷った末、彼の最も有名なヒット曲を取り上げることにしました。 引退してしばらくしてから、再評価の動きが出てきました。 まず1984年バングルス(The Bangles)が「気分はモノクローム(All Over the Place)」というアルバムで、メリー・ゴー・ラウンドの「リヴ(Live)」をカバーしています。 続いて日本では2001年頃に「名盤の殿堂シリーズ」で、この人のアルバムが再発されました。 同じ2001年、ウェス・アンダーソン(Wesley Anderson)監督の映画「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ(The Royal Tenenbaums)」でも彼の曲が使用されました。 またトニー・ブラス(Tony Blass)のドキュメンタリー「ワンマン・ビートルズ(The One Man Beatles)」が、2010年のダヴィッド・ディ・ドナテッロ賞にノミネートされています。 そのドキュメンタリー映画を製作したトニー・ブラス氏は私のブログの読者様で、縁あって私は彼と意見交換するようになりました。 氏は音楽の知見に優れた人物で、彼との交流から私はかなり刺激を受けました。 ただそうしたひいき目なしでも、彼のドキュメンタリー映画はとても優れた作品です。 英語の動画ですが、リンクを貼っておきましょう。 Emitt Rhodes: The One Man Beatles 話を戻します。 再評価されるには、きっかけが必要です。 曲がすばらしいのはもちろんですが、その人の代名詞みたいな曲があった方が、再評価されやすいかもしれません。 その意味で彼はひっかけ針として、この曲のヒットがあって良かったと思います。 音楽マニアは、ちょっとしたヒット曲で覚えていたりしますから。 ましてやそれが宝石のような曲だったら尚更。 彼は「ワンマン・ビートルズ」と呼ばれ、今でもポップス・ファンに大切に聞かれている人です。 私もその1人として、彼の曲が広く聞かれることを切に願っています。

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